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Network Services2026年5月12日読了 1231 views

Cloudflare Mesh を試してみたら、これ、面白い

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所属: Cloudflare Japan 株式会社|得意分野: Cloudflare のこと

2026年4月に Cloudflare Mesh という製品が発表されました。旧 WARP Connector のリブランドですが、機能拡張と合わせて新たなメッシュネットワーキング製品として位置づけられています。実際に触ってみた感想と、既存の VPN や他社 SASE 製品との違いについて整理してみました。

Cloudflare Mesh とは何か

シンプルに言えば、「Linux サーバーに warp-cli を入れるだけで、複数拠点が一つのプライベートネットワークになる」というものです。各参加者に 100.96.0.0/12 の Mesh IP が自動割り当てされ、TCP/UDP/ICMP で双方向・多対多の通信が可能になります。

旧 WARP Connector からの主な変更点:

  • ノード上限が 10 → 50 に増加
  • 専用ダッシュボード(ネットワークマップ、診断、ウィザード)
  • Workers からの VPC アクセスが cf1:network バインディングで可能に
  • HA(Active-Passive)対応

実際の構成例

自宅の MacBook、AWS の EC2、Oracle Cloud のインスタンスを繋げてみました。全体の構成はこんな感じです:

MacBook (WARP Client)
  Mesh IP: 100.96.0.1
        |
        v
  ================== Cloudflare Edge ==================
        |                    |
   AWS EC2             OCI Instance
   Mesh IP: 100.96.0.3  Mesh IP: 100.96.0.2
   VPC: 10.0.1.0/24    VCN: 10.0.2.0/24

設定にかかった時間は、AWS と OCI のルートテーブル変更を含めて20分程度。 apt install してトークンを入れるだけなので、手順書を作るほどでもありませんでした。

他社製品と何が違うのか

SASE 市場は Zscaler、Netskope、CATO、Palo Alto などが入り混じっていますが、Cloudflare Mesh は明確に異なるポジションを取っています。

専用ハードウェアが不要

ベンダー 拠点側に必要なもの
Cloudflare Mesh Linux ホスト 1台
Zscaler Branch Connector VM
Netskope SASE Gateway HW or VM
CATO Socket HW or vSocket
Palo Alto ION アプライアンス

他社は全て専用アプライアンスか VM が必要です。Mesh は apt install cloudflare-warp だけ。コスト面でも運用面でも、この差は大きいです。

WAN 契約が不要

CATO は自社バックボーン利用が前提、Palo Alto や Zscaler は SD-WAN ライセンスが別途必要。Mesh は Cloudflare の 330+ 拠点のエッジを利用します。既存のインターネット接続で動作し、追加の回線契約は不要です。

Cloudflare WAN との使い分け

Mesh はノード上限 50、ソフトウェアベースのメッシュ接続に適しています。一方、Cloudflare WAN(旧 Magic WAN)は GRE/IPsec トンネルで対応ルーターと接続し、数十〜数千サイトの大規模展開が必要な場合に選ばれます。

シンプルな拠点間接続が必要なら Mesh、既存ネットワーク機器との統合やエンタープライズ級の WAN 機能が必要なら WAN、という使い分けです。

Tunnel との使い分け

同じ Cloudflare 内でも Tunnel(cloudflared)と Mesh は明確に役割が分かれています:

項目 Tunnel Mesh
トラフィック方向 一方向(Cloudflare → 内部) 双方向(全参加者間)
トポロジ Star Full Mesh
サーバー → WARP 端末 不可 可能
サーバー → サーバー 不可 可能
プロトコル HTTP / TCP TCP / UDP / ICMP

Web アプリを「公開」したい場合は Tunnel、拠点間で「相互通信」したい場合は Mesh、という使い分けです。同一サーバー上で併用も可能です。

セットアップ

Split Tunnel の設定

デフォルトの除外リストに 100.64.0.0/10 が含まれていますが、これは Mesh IP のレンジ 100.96.0.0/12 を包含しています。結果として、Client → Mesh IP への通信がローカル NIC に送出され、タイムアウトします。

対処は単純で、除外リストから 100.64.0.0/10 を削除するだけ。CGNAT レンジですが、一般的な企業ネットワークでは使用されていないため、副作用はほぼありません。

Mesh 参加者間のアクセス制御

Gateway Network Policy は Mesh IP 間の通信に効きません。Mesh 参加者間のトラフィックは Cloudflare Edge 上でダイレクトにルーティングされるためです。

アクセス制御は以下の方法で行います:

  • Split Tunnel:特定の Mesh IP を除外リストに入れると到達不能に
  • OS ファイアウォール:各ノードの iptables/nftables で細粒度制御

IdP グループで「Mesh 利用者」を管理し、プロファイルを分離することで、チーム別の接続先制御も可能です。

Workers との統合が面白い

cf1:network バインディングを使うと、Workers から直接プライベートネットワークにアクセスできます。これは他の SASE ベンダーには存在しない機能です。

ユースケースの一例:

  • 社内 API にアクセスする Slack Bot
  • プライベート DB にアクセスするダッシュボード
  • 社内システムを連携するワークフロー
  • AI エージェント利用、連携(後述)

従来は Tunnel + パブリックホスト名で迂回していたものが、シンプルに書けるようになります。

AI エージェントとの相性

最近の AI エージェント(Claude Code, Cursor, Codex など)がステージング環境の DB や内部 API にアクセスしたい場面が増えています。これらのリソースがプライベート VPC 内にある場合、従来はインターネット公開かフル VPN 接続が必要でした。

Mesh を使うと、以下のようなワークフローが自然に実現できます:

1. コーディングエージェントの環境アクセス
開発者が「デプロイ状況を確認して」「ステージング DB の analytics を確認して」とエージェントに依頼した際、Mesh 経由でプライベートリソースに安全に到達できます。

2. Workers 上で動作するプロダクト組み込みエージェント
Agents SDK で構築したエージェントが cf1:network バインディングを使い、内部 API やデータベースにアクセス。MCP (Model Context Protocol) サーバーと組み合わせることで、スコープ付きのアクセス権限と監査証跡を維持できます。

3. パーソナルエージェントの安全な公開
自宅の Mac mini で動作する OpenClaw などのエージェントを、外出先のデバイスから安全に利用。パスワードだけの保護より堅牢で、シェルアクセスやファイルシステムアクセスを持つエージェントのリスクを低減できます。

wrangler.jsonc での設定例:

"vpc_networks": [
  { "binding": "MESH", "network_id": "cf1:network", "remote": true },
  { "binding": "AWS_VPC", "tunnel_id": "350fd307-...", "remote": true }
]

このバインディングを使うと、エージェントは env.MESH.fetch("http://10.0.1.50/api/data") で内部ホストに到達できます。個別のホスト登録は不要で、Mesh 内の任意のエンドポイントにアクセス可能です。

まとめ:Cloudflare Mesh と WAN の使い分け

Cloudflare 内での選択として、Mesh と WAN は明確に役割が分かれています。

Cloudflare Mesh を選ぶ場面:

  • Linux ホストにソフトウェアを入れるだけで始めたい
  • 複数クラウド / オンプレ拠点を簡単にメッシュ接続したい
  • リモートユーザー、サーバー、エージェント間の相互通信が必要
  • Workers からプライベートネットワークへのアクセスが必要

Cloudflare WAN を選ぶ場面:

  • 既存のルーター・ファイアウォールと GRE/IPsec で統合したい
  • L7 アプリ可視化やファイアウォール機能が必要
  • Active-Active 回線冗長が必要

Mesh はソフトウェアベースで手軽に始められ、WAN は既存ネットワーク機器との統合とエンタープライズ級の機能を提供します。どちらも Cloudflare One プラットフォーム上で動作する点は共通です。

個人的には、ゼロからの構築やクラウド主体の環境であれば Mesh のシンプルさが魅力的です。Linux サーバーに apt install するだけで始められる手軽さは、検証環境の構築や開発用途で活きてくると思います。


参考リンク

免責事項

本記事は Cloudflare Japan のソリューションエンジニアが技術的な知見の共有を目的として個人の立場で執筆したものです。記事の内容は執筆時点の情報および執筆者の主観的な見解を含んでおり、Cloudflare, Inc. の公式な見解・推奨・仕様保証を構成するものではありません。また、記載された構成や手順がすべてのお客様環境で同様に適用できることを保証するものでもありません。製品の正式な仕様や技術サポートについては、Cloudflare 公式ドキュメントまたは担当チームにお問い合わせください。